第38回日本薬剤師学術大会にて (2005年10月)

在宅における感染症対策マニュアル

愛知県褥瘡ケアを考える会/うめ森調剤センター薬局 伊藤美里

当会は、医療チーム内で褥瘡治療薬に関して情報提供することを目的に1997年より活動している。褥瘡治療には感染症対策が不可欠であり、また、在宅での感染症対策は薬剤師が関わるべきだとの考えに基づき、一昨年より「在宅における感染症対策マニュアル」の作成を開始した。

対象とされる微生物はMRSA・結核菌・疥癬虫・真菌・緑膿菌・レジオネラ菌・エイズウイルス・B型肝炎ウイルスである。ここでは医学の進歩に伴い、増加傾向にあるMRSAについて説明したい。 MRSAは在宅で過ごされる高齢者や重症患者で感染防御能の低下した患者さんに引き起こされる疾患の代表となっている。

方法として、1)各微生物の感染時の症状 2)感染経路、感染を受けやすい状態 3)空気感染、飛沫感染、接触感染という各微生物の感染に応じた対応法 4)患者に触る際の注意事項、接触後の処置法 5)患者に触る際の注意事項、接触後の処置法有効消毒薬と有効濃度、その消毒薬の使用方法について説明したい。

MRSAは、メチシリン・レジスタント・スタヒロコッカス・アウレウスの略語で、メチシリンに耐性を獲得した黄色ブドウ球菌を意味する英語名に由来している。国内の院内感染菌は1970年代までは緑膿菌が主流であったが、1980年代以降はMRSAが院内感染の首位を占めるようになった。主な感染経路はMRSAに汚染された器物・手指を介した接触感染である。呼気・吸気からの感染はないとされている。

感染源は 1)MRSA感染患者 2)医療従事者 3)院内環境の3つがあげられます。黄色ブドウ球菌はグラム陽性球菌の一種で、化膿性炎(皮膚化膿疾患、中耳炎、結膜炎、肺炎)、腸炎(食中毒含む)など創傷感染、呼吸器感染、消化器感染の原因菌です。感染後は接触感染に由来した接触予防策の適応をとる。接触予防策では患者さんから医療従事者・介護者へ病原体の伝播を防ぐために基本的な感染対策であり重要である。

MRSA感染後、実際に介護をされる人の対応の仕方と接触時の対策では、1)手洗い・うがい・着替えの徹底 2)介護中首から上はさわらない 3)褥瘡のある患者→ディスポの手袋が着用とされる。「手洗い」は「石鹸で十分に泡立て、短時間、手全体をこすり合わせ、流水で洗い流すこと」と定義されており、院内感染予防のためのもっとも重要な手段である。
MRSAは皮膚細菌叢中の常在菌に含まれるため、抗菌剤を含んだせっけんが使用されることがある。またはふつうの石鹸による手洗いの後に速乾性アルコールを使用することもある。
MRSAは感染ルートを遮断することで感染の拡大を防止することができる。このことは生活者、医療従事者または介護者双方で遮断することが必要である。感染者に対する予防ではなく、だれでもが感染源になるというこことが重要であり、人権を守る事でもあると考えています。矢印を双方向にした。
感染経路ごとの注意事項ではMRSA患者と医療従事者および介護者の注意すべき点をまとめた。
MRSA患者は手洗い ・排菌部位の被覆 ・咳や痰が激しい場合はマスクの着用が必要とされる。
医療従事者および介護者は褥瘡やカテーテル類を処置する場合、手荒れがひどい場合には手袋の着用が必要とされている。定期的なうがいも必要とされる。

消毒法では各部位ごとに最適な消毒薬とその商品名を示している。
また重要度を上から順番に並べている。MRSAは食器、衣類の扱いは家族と同じでよいが、どうしてもやらないと気がすまない人や、他に易感染者(高齢者や重症患者で感染防御能の低下した患者さん)が居るときの方法である。
現在床の消毒は環境表面には細菌汚染があるが、これらの環境表面の細菌が患者や その家族に汚染することはまれであるということで必要ないとされている。よってベッドまわりの接触部分の消毒ということで家具にした。
家具も定期的に清掃するか汚染されたときに消毒する。
衣類、リネン類などは特別の汚染がない場合は、通常の洗濯、乾燥で十分である。
食器は別々にする必要はなく、洗浄も通常の家庭用洗剤で普通に行なう。
発症していなければ、入浴についても特別の対応は不要である。
汚染されたと思われる物品については、消毒用アルコールを浸したガーゼや布で拭いておく。今回、私達が作成目標とするマニュアルは、在宅で介護を行っている家族が感染症について正しく理解し、予防し実際に起こった時の接触時に対応やそれぞれの環境化での正しい消毒法が行なえるものとした。そして生活の質を高めることで介護する人もされる人も安心して生活を送ることができると考えている。

学会・活動報告

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