PSWC2004第2回世界薬学会議 (2004年5月30日〜6月3日まで)

のなみ調剤センター薬局 井田由美

5月30日から6月3日まで京都で開催された世界薬学会議に、うめ森調剤センター薬局の伊藤と二人で行ってきました。

初日のオープニングセレモニーは、秋篠宮両殿下をお迎えして盛大におこなわれました。組織委員長の杉山雄一氏の開会あいさつに始まり、秋篠宮殿下のおことば、FIP代表のJean Parrot氏のあいさつ、学術顧問の永井恒司氏、同じく学術顧問のLeshe Z. Benet氏のあいさっと続きました。休憩をはさみ、2001年ノーベル化学賞を受賞された、野依良治教授の基調講演があり、その後、授与式がとり行われました。

野依氏は、基調講演のなかで、分子触媒の科学と機会について、つぎのように述べられました。現在、私たちの健康と日常生活は、石油や植物から作られた化学製品により、守られ、また、営まれています。しかし、その大切な化学製品を作り出すために多くのエネルギーを必要としたり、処分に困るような副産物を生産したりして、地球の環境に多大な負担を強いています。生産から処分するまでトータルで考え、高効率で生産し、廃棄物処理のコストを抑えることのできる反応系を研究し、開発すべきでしょう。この目標を達成することにおいて、分子の触媒作用は重要な役割をはたしており、私たちの研究努力は続けられています。

オープニングセレモニーの後は、中庭でウェルカムパーティーが開かれました。おでん、焼き鳥、たこ焼きなどの食べ物と阿波踊りで世界の人々を歓迎しました。 5月31目から6月3目まで、プレナリーレクチャー、シンポジュウム、ポスタープレゼンテーション、企業などによる展示がおこなわれました。内容は、基礎研究から最先端のものまで、さまざまで、日常の仕事とは異なった雰囲気をあじわってきました。 私にとって、今回の会議への参加は調剤業務にすぐに役立つ内容ではなかったのですが、小腸や結腸での薬物の吸収、代謝を一つ一つ確認する研究、ナノテクノロジーによるデリバリーシステムの効率化など、興味深いものがありました。 残念ながら、発表もポスターもすべて英語で、京都国際会議場だから同時通 訳があるだろうと、当てにしていたものがはずれてしまい、耳と目と勘をフルに働かせた4日間でした。

出席を認めてくださった薬局の皆様、同行してくださった伊藤さん、どうもありがとうございました。この場を借りて、御礼申し上げます。

第2回世界薬学会議報告

うめ森調剤センター薬局 伊藤美里

はじめに

平成16年5月30日から6月3日の5日間にわたり、第2回世界薬学会議(PHARMACEUTICAL SCIENCES WORLD CONGRESS 2004(PSWC2004))が京都府京都市の京都国際会館に於いて開催された。今回、この会議に出席する機会を得たので、概略を報告したい。 第1日目は杉山雄一氏より開会の辞があり、続いて秋篠宮殿下、FIP会長、科学顧問座長からの演説があった。特別 講義としてノーベル賞受賞者野依良治氏による「分子触媒作用 科学と好機」の発表、その後授賞式がとり行われた。

シンポジウム・講演について

第2日目から最終日までは35項目のシンポジウムと8項目の講演が各部屋で発表された。発表な内容としては「医薬品の創出と開発における代謝及び輸送研究」「薬物代謝と輸送における薬物相互作用」等の薬物代謝に視点を置いた研究発表のものや、「テーラーメイド薬物治療」「遺伝子及びワクチンデリバリーにおけるナノテクノロジー」等の最新の遺伝子研究を中心とした発表があった。各発表いずれも参加者からの様々な立場からの熱心な質問と議論が交わされた。

ポスター発表について

第2日目から2日間にわたりポスター発表があり、大学や企業の研究室からの発表を中心とした、「ラット小腸での灌流を行なったグリセオロール能動輸送の動的特性」「腸内細胞でのジルチアゼム代謝の比較評価‐ラット小腸のS9画分とミクロソーム」の等の発表があった。 「イチョウ葉エキスに対するトルブタミドおよびミタゾラムの体内動態」ではイチョウ葉エキス(GBE)がヒトの薬物代謝酵素であるチトクロームP450(CYP)に及ぼす影響を明らかにする目的で健常人にGBEを連日投与しCYP2C9の基質であるトルブタミドおよびCYP3A4の基質であるミタゾラムの体内動態について研究した。

最後に

ほとんどの参加者が大学や製薬メーカー等の研究者で、私のような開局薬剤師からの参加は少なかった。が、近年健康食品が市場で容易に手に入るようになり、その安全性、特に医薬品との相互作用は避けられない問題になっている。医薬品との相互作用を引き起こす健康食品がヒトのCYPに及ぼす影響を明らかにする研究は必要であり、学会で正確な情報を得て、科学的な観点から情報提供を得ることは大切である。患者さんに最も近い開局薬剤師もこのような学会にもっと積極的に参加して日々の服薬指導の中に結びつけていくことが必要であると考える。そういった意味でもこの会議で内容の濃い議論がなされたことは非常に有意義であった。

学会・活動報告

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